私は設計の仕事をしていますが、試作品を作るために3Dプリンターを使うことがあります。
昔は試作品を作るとなると、CADのデータをメーカーに送り作ってもらうのが普通でした。
データを送り、見積もりをもらって、依頼を出して数日~数週間くらい待ってようやく完成って感じでした。
ところが3Dプリンターが職場に導入されてから状況が一変、簡単な物であればメーカーに頼まなくても自分で1日あれば作れるようになりました。
「これ家にもあったらいいのになあ。」
と使うたびに思っていましたが、最近では嬉しいことに3Dプリンターが数万円で買えるようになりました。
ものづくりが好きな人の場合、この3Dプリンターに興味を持ち購入を検討している方もいると思います。
そこで今回は実際に購入して1年以上使用した私が3Dプリンターの魅力や注意点についてお話しします。
大したことは話せませんが、参考になれば幸いです。
- 3Dプリンターに興味があり購入を検討している人
- DIYやものづくりが好きな人
愛用の3Dプリンター
私が購入した3Dプリンターは、XYZプリンティングのダヴィンチnanoというモデルです。
同社が販売している3Dプリンターの中で一番小さいモデルになります。
実売価格は25,000円ほどで、3Dプリンターの中では比較的安い方です。
3Dプリンターは印刷方式の違いで何種類かに分類されますが、ダヴィンチnanoは熱溶解積層方式と言われる熱で溶かした樹脂を少しずつ重ねて形にしていくタイプです。
(安い3Dプリンターのほとんどはこの方式です。)
3Dプリンターが役立つ場面
ここでは3Dプリンターがあると実際にどんなことが出来るのか紹介していきます。
私が思いつくのは以下の様な物ですが、もしかしたら他にも使い道があるかもしれません。
普段の生活や仕事で役立つ便利グッズの製作
3Dプリンターで実際に作った物の一例がこちらになります。
これだけ見ると何じゃこりゃって感じですが、実はこれスマホスタンドです。
こんな感じでスマホを置くのに使います。
ものすごく地味ですがこれが意外と使えます。
スマホを机の上に寝かせて置くより場所も取りませんし、手に取る時も楽ちんです。
Youtubeなどの動画を見る時にも役立ちます。
他にも収納したい物とジャストサイズの小物入れや○○ホルダー、××スタンドなどあったらいいけど売っていない物を作ることが出来ます。
普段の生活はもちろん仕事や趣味で役立つ物が色々作れます。
壊れた物の修理
家電製品やおもちゃなどは一つの部品が壊れて使えなくなってしまう事があります。
そんな時3Dプリンターがあれば直せる可能性があります。
壊れた部品と同じ形の物を作ることが出来ればまた使えるかもしれません。
アート作品の製作
3Dプリンターで作れるのは実用品だけではありません。
フィギュアや模型などのアート作品も作ることが出来ます。
研磨や塗装などの後工程が要りますし、美術のセンスが無い私には無理そうですが。
3Dプリンターを購入する前に知っておきたいこと
3Dプリンターに限った話ではありませんが、どんな物もいいことばかりではありません。
私自身3Dプリンターを約1年使用してきましたが、大変な思いもそれなりにしました。
そこでここでは購入する前に知っておきたいことを紹介します。
ちなみにここでお話しするのは一般的な熱溶解積層方式の3Dプリンターの話になりますのでご承知おきください。
製作に時間がかかる
通常のプリンターで紙に印刷するのと違い、3Dプリンターは印刷にメチャクチャ時間がかかります。
上で紹介したスマホホルダーは約3時間かかりました。
大きいものになると10時間以上かかる場合もあります。
印刷設定で精度や密度を上げるとさらに時間がかかります。
また印刷が失敗することもあるので、作り直しになることも珍しくありません。
せっかちな人には向いていません。
何でも作れるわけじゃない
一見何でも作れそうなイメージがありますが、実はそうでもありません。
極端に小さい物や高い精度を要求する物はまず無理だと思ってください。
精度は0.1mm以下くらいが限界で、それ以下になると厳しいです。
(出来る物もあるかもしれませんが、数万円で売られている安価なモデルはほぼ無理だと思います。)
完成品の強度が低い
一般的な射出成型で作られた樹脂製品に比べ、3Dプリンターで作られた物は強度が低いです。
そのため作る際はそのことを踏まえて形状を決めなければなりません。
板厚を厚くする、応力が集中しないように角や隅にRを付ける、リブを追加するといった対策が必要です。
意外とうるさい
3Dプリンターは作動中の音が結構うるさいです。
静音を謳っているモデルでもそれなりに音はします。
紙を印刷するプリンターも作動中にガーガーと音がしますが、あれが数時間続くと思ってもらえればいいです。
そのため置き場所や使う時間帯には注意が必要です。
トラブルは自力で解決しなければならない
3Dプリンターは通常の家電と違い、電源入れて終わりという訳にはいきません。
様々な要因で印刷が中断したり、作品が歪な形になるなどのトラブルがよく起こります。
また3DプリンターはPCとセットで使うため、プリンターそのものではなくソフトの設定が原因の場合もあります。
とにかく何かあった場合、自分で原因を調べ対策を考えなければなりません。
自力でなんとか出来ない人には正直おすすめできません。
お金はかかりますが、3Dプリントを代行してくれるサービスがあるのでそれを利用した方がいいです。
3Dプリンター選びの注意点
ここでは私自身の経験(失敗)も踏まえて、3Dプリンターを選ぶ際に注意するべき点を紹介します。
印刷方式と使用する材料を調べておくこと
3Dプリンターは色々な印刷方式があります。
一般的な熱溶解積層方式以外に、紫外線で固まる樹脂を使う光造形方式や、金属の粉を固めて作る金属3Dプリンターなんてのもあります。
どの印刷方式にも向き不向きがあるので、自分が作りたい物に適した物を選びましょう。
また印刷方式によって使用する材料も変わるので、プリンター本体だけでなく材料もチェックしましょう。
消耗品で定期的に購入する物なので材質だけでなく価格も要チェックです。
メーカーによっては純正品(高い)以外は使えないというケースもあるので注意が必要です。
(実は私が使っているダヴィンチnanoが正にそれで少し後悔しています。)
本体のサイズと重量を調べておくこと
3Dプリンターは小型の物でもそれなりの大きく重さもあります。
購入前に寸法と重量を調べておきましょう。
同時に置く場所もあらかじめ決めておき、
「買ったはいいけど置き場所が無い。」
なんて事が無いようにしましょう。
オートキャリブレーション機能が付いている物を選ぶこと
3Dプリンターは台座の上にデータと同じ形を作っていくのですが、この台座が傾いているとデータ通りの形になりません。
そのため3Dプリンターの台座は傾きを調整できるようになっています。
ただし傾きの調整を手動でやるのは面倒なので、自動で傾き調整を行ってくれるオートキャリブレーション(オートレベリング)機能が付いている物を選びましょう。
出来ればwifi接続に対応している物を選ぶこと
3Dプリンターの中にはwifi接続に対応しているモデルもあります。
wifiに対応していればどこにでも置けるので置き場所に困りません。
wifi非対応のモデルは付属のUSBケーブルでPCと繋ぐことになりますが、1~1.5mくらいしかないのでPCの近くにしか置けません。
SBの延長コードを使えばPCから離れた所に置けますがコードが邪魔くさいです。
3Dデータの入手方法
3Dプリンターだけでは物を作ることは出来ません。
作りたい物の3Dデータも必要です。
3Dデータの入手方法は2通りあります。
3D CADでデータを作成する
一番良いのは3D CADを使い自分でデータを作ることです。
形状も寸法も全て自分で決めることが出来ます。
3D CADはstlというファイル形式に変換出来れば何でもいいです。
先程紹介したスマホスタンドも3D CADで作りました。
3D CADは覚えるのが大変ですが、使えるようになれば色々作れるようになるので、3Dプリンターを買うならぜひマスターしたいところです。
(私も一部の機能しか使えていないので勉強中です。)
ネットで無料公開されているデータを入手する
「CADなんて使えねぇよ!」
って言う方もいるかもしれませんが、CADが使えなくても大丈夫です。
3Dプリンター用のCADデータは色々な物がネット上で無料公開されているので、それをダウンロードして作ることも出来ます。
上の写真はネットで公開されていたデータから作ったネコ型のスマホスタンドです。
スマホスタンドは私が作ったようなシンプルな物から、プラモデルの様に複数の部品を組み合わせて作るものまで種類も豊富です。
思いついたことを形に出来る楽しさ
ここまで3Dプリンターについて色々お話ししました。
注意しなければならない点もありますが、自分で考えたことを形に出来るのが3Dプリンターの最大の魅力だと思います。
多くの方が3Dプリンターで作った物をネットで公開していますので、まずそれらを見ることをおすすめします。
それらを見て興味が湧くようなら検討する価値はあると思います。
私が使っているダヴィンチnano(wifi非対応)については別記事で紹介したいと思います。